「風の森」というお酒

酒をグラスに注ぐ。透明感のあるレモンイエロー。


わずかに残る発酵時の炭酸ガスが泡粒をつくる。


顔に近づけるとほのかな果実の香り。


口に含むと鼻に抜けるさわやかな香りと共にボリューム感のある味わいが押し寄せる。


のど元を過ぎた後は、口中をクリアにまとめていく余韻ある酸味。


お酒を飲むという一連の動きの中で人間の五感をくすぐる酒。


それが風の森。


全てが無濾過・無加水・生酒。


生ならではのリッチで繊細な質感、立体感がありトロリとした味わいが風の森の特徴。




「風の森」を醸す 油長酒造

奈良県の南部、大阪府と奈良県との県境に位置する金剛葛城山系の麓の奈良県御所市(ごせし)にある油長酒造は、享保四年(1719年)創業。

以来300年にわたり、葛城山系の良質な深層地下水を活かした酒造りを続けてきた。


「風の森」を造る仕込水

風の森の仕込水は金剛葛城山系深層地下約100mから汲み上げた地下水を使用。

この水は鉄分・マンガンをほとんど含有していない日本酒造りには最適な水。

また、硬度が非常に高く、250mg/L 前後の超硬水。

風の森らしい輪郭のくっきりとした立体的な味わいを造る重要な水となっている。


「風の森」名前の由来

近くには一年中 心地よい風が駆け抜ける「風の森峠」があり、古事記、日本書記にも登場する風の神を祭る風の森神社がある。

「風の森」という酒名はここから取られている。


「風の森」のこだわりと「風の森」らしく造るための技術

-油長酒造HPより-

〈長期低温発酵〉
日本酒の発酵は、麹によるでんぷんの糖化と、酵母による糖のアルコール分解とが同時に進行します。
ここで重要になるのが、発酵の温度を的確にコントロールすることです。
低精米のお米と超硬水の仕込水に含まれるミネラルにより、酵母が精力的に働き、なにもしなければ醪の温度は自然に上昇していきます。
温度が高すぎると、発酵が進みすぎ、美味しいお酒にはなりません。
当蔵では、独自の設計を施した特殊なタンクを使用しています。
醪の温度を抑え、発酵の速度を穏やかにすることで、30日以上にわたる長期発酵が可能となり、味わいにボリューム感がありながら透明感のある酒質で、白ぶどうや洋ナシやライチを連想させる豊かな香りを纏ったお酒に仕上がるのです。


〈低精白米〉
それぞれのお米が持つ本来の特性や、栄養分、大地のエネルギーを大切にしたいと考え、低精白米での酒造りに力を注いでいます。
低精白米は、一般には溶けにくいと言われてきました。
これが大吟醸といった高精白米を使ったお酒がよいとされてきた理由です。
しかし、私たちは、力強い麹を使用することで、低精白でも十分にお米を溶かし、そのお米の個性を余すことなくお酒の個性として反映させることができます。
また、低精白では、ミネラルなどの栄養がありすぎて、酵母が精力的に働くため、発酵のコントロールが非常に難しくなります。

そこで、解決策の一つとして、ウルトラファインバブル水による洗米を導入しています。
UFB(ウルトラファインバブル)はその名前の通り、極小の気泡のことです。
一般的には1マイクロメートル(1/1000mm)以下のナノメートル(nm)単位のものがUFBと呼ばれています。
洗米時の水をナノバブル化することで洗浄性を高め、米粒の周りや溝の中に付着している糠をくまなく洗浄します。
このUFBは半導体の洗浄にも使われています。
こうして造られたお酒は、低精白でも、的確に醪のコントロールを行い、磨かないことによってのみ表現できる個性、様々な味覚の要素を兼ね備えた、立体感ある味わいの風の森を表現しています。


〈単一7号系酵母使用〉
お酒の個性を決める上で酵母の種類がひとつの肝になりますが、風の森には7号系酵母のみしか使いません。
この酵母は、当蔵のみが持つ独自の酵母で、強力な発酵力を備えています。
豊富な有機酸を生み出すこの7号系酵母は、長期低温発酵条件下で様々な香気成分を持つ複合香を形成し、風の森の持つ果実感あふれる酸味と香りの個性に繋がっています。


〈無濾過無加水生酒〉
私たちは、搾りたてのそのままの味わいをお客様にお届けしたいという想いから、ろ過も、上槽後の加水もしない、無濾過の生酒に特化してまいりました。
生酒による、とろっとした豊かで滑らかな質感や、時間とともに経過してゆく繊細な味の変化がその最大の魅力です。
しかし、生酒であるがゆえに、安定した品質でお届けする難しさもあります。
生酒の品質を安定化させるためには、微生物管理をきっちり行い、酸化を抑え、温度をできるだけ低く管理する必要があるのです。


―微生物管理―

生酒であるがゆえに、微生物汚染には細心の注意を払います。
なぜなら、火入れという殺菌工程のない生のお酒ですので、もしお酒の品質を劣化させる微生物(火落菌など)がお酒の中に存在すると味わいが劣化してしまいます。
そこで火入れをしない風の森はすべてお酒を搾った後に火落菌検査を行い、お酒の品質を変化させてしまう悪い微生物がいない状態を確認しています。


―酸化を抑える―

酸化とはお酒が空気と混じり合い、酸素がお酒に溶け込むことです。
これを少しでも少なくするために、どのようなことに取り組んでいるかというと、
1つはフィルターによる濾過を一切行いません。
フィルターによりろ過をすると、味わいを整えることができる反面、搾りたての風味や質感が失われます。
それと同時にポンプによってかき混ぜられることで酸化も進んでしまうのです。
2つ目に、当蔵は階層構造になっており、2階にある搾り機から1階の貯蔵タンクまで、ポンプを用いることなく、重力だけで直接お酒を移動させることもできます。
さらに、独自に開発された瓶詰機のノズルは、お酒の液面に沿うように、瓶底から上方に移動する仕組みになっており、瓶詰め時にお酒を泡立てず、優しく詰めることができます。
このようにお酒に極力ストレスをかけず、そっと扱ってあげることで、酸化を抑え、お酒本来の持つ味わいや風味を変化させることなく、お客様のもとまでお届けすることが出来ます。


―温度管理―

蔵内では搾ったお酒は氷点下の超低温にて保管し、味わいの変化のスピードを抑えています。
そのお酒を先に述べたように特殊な瓶詰めを行い、その後氷点下貯蔵、冷蔵輸送により出荷されたお酒は、パートナーの酒販店さまの店頭でも冷蔵販売していただいています。このように酒蔵のみならず流通、酒屋さんなど品質の対する思いと取り組みが、風の森の品質の安定性、酒質に大きな影響を与えているのです。

これらの取り組みにより、味わいの変化のスピードをできるだけ抑えた風の森は、開けたての美味しさのみならず、炭酸ガスがなくなった後の密度ある味わいも楽しむことが可能なのです。
開栓後は1ヶ月でも時間をかけてゆっくりとお楽しみいただける生酒です。
ぜひ時間軸とともに変化を見せるそれぞれの表情をお楽しみ下さいませ。